杣口通信[里山便り①]


1994年創設、山梨県山梨市牧丘町杣口字青山の最奥に立つ小さな山小屋「杣口山の家」から季節の便りをお届けします。山小屋といっても一般営業はいたしておりませんのであしからず。
by somaguchi
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遮断されるのはどっち?

 ここ数年、小屋周辺の野生動物、とくに日本鹿の数が急激に増加したようで、畑の野菜などの栽培物がかなりの被害に遭っているようだ。小屋でも昨年ソバを撒いたところ、30センチほどに育った地上15センチくらいから上をきれいに食われた。まるで刃物を水平移動させたみたいにそれは見事だった。今年は今年で、春に植えたジャガイモの花がやられたり、トマトやキュウリの苗さえかじられてしまった。それとすぐ分かる糞があるので、たぶん鹿の仕業だろうと推測されるだけで現行犯ではないから、即逮捕というわけにもいかないし、われわれは銃を持っていないから射殺もできない。だが彼らの仕業であるのはほぼ確実だ。
 夕刻、陽が落ちて裏の森に闇が満ちると、とたんに彼らの鳴き交わす声が聞こえ始める。遠くまで照らせるライトを向けると、光る目がふたつ。たかだか20メートルほどの距離か。ピィーと鳴いて身をひるがえして森の闇に消える。また別のところから鳴き声がする。
 夜遅く小屋まであとわずかというところで、車のライトに照らされた目の前の路上に、突然立派な角を持った雄鹿が段差のついた下の畑から飛び出してきてあわてたこともある。もうすこしスピードが出ていたらあわや激突かというほどの近距離だった。
 だいたい週末にしかいないが、こんな光景はひんぱんにあるから、かなりの棲息数になるだろうと思われる。猪がリンゴの木に体当たりをして実を落として食うなんて笑い話のような本当の話も聞かれる。
 そんなわけで地元農家の被害甚大というので、国の予算がついて、この地域全体の山との境に防獣フェンスを張り巡らす計画が3年ほど前にスタートし、今年はついに小屋と裏山とのあいだに金網が張られることになり、間もなく完成の模様。
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 この金網フェンス、鹿と猪用で、熊には効かないらしいが、まあこれまで熊に遭遇したことはないからいいか。でもこうしてみると、じつに見事に自然と遮断され囲い込まれてしまった人間あるいは人間社会という図式も見えてきて、気休めの対症療法と思えなくもない。野生動物たちと共生するのに、なにかもっと別の根本からの解決策はないものかと思えてならない。
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by somaguchi | 2007-11-08 11:36